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癌に勝ち、世界一の自転車レースに勝った男「ランス・アームストロング」

「ただ、マイヨ・ジョーヌのためだけでなく

講談社 訳:安次嶺佳子

ランス・アームストロング世界一過酷な自転車レース「ツール・ド・フランス」に勝った癌患者。

ツール・ド・フランスという自転車レースがある。約1ヶ月間フランス全土を一周する世界一過酷と言われるレースである。そこで優勝するにはもう人間であってはならないほど、強靱な体力と精神力が要求されるのである。どれほど過酷か?それは走ってみなければわからないが、日本人でこのレースに出たのはまだ一人(今中大介)しかいない。
例えばそのハードさを理解していただく例として……たとえば一般的な男子の心拍数は平常時で毎分50〜70回程度である。それが普通160回/分程度上がればもう限界で運動を続けることはできない。しかし、このレースに出る男たちは平常時でわずか毎分30回程度というスポーツ心臓を持っており、その最大心拍数は200回/分にもなるのである。そしてさらに凄いのは、彼らはその心拍数で2時間以上もアルプスやピレネーの山岳コースを登りつづることができる点である。まさにそのハードさは人間の限界を超えている。あのスケートで無類の強さを誇ったオリンピックの金メダリスト「エリック・ハイデン」でさえ、ツールに出た頃はまともに完走することさえできなかった。
そんな化け物たちがひしめき合うレースに、末期の癌になった男がその病を克服して、優勝してしまうなんて、まさに夢物語である。

きわめて確率の低い末期癌からの生還。

彼の癌は睾丸癌である。しかも、それが肺などの内臓10カ所に転移して、さらには脳にまで2カ所転移しているという末期中の末期癌である。しかし、彼は想像を絶するような化学療法による抗癌治療に耐え、ついにはわずかな勝算(生存率3%)しかなかったその病に勝ってしまうのである。それだけでも凄いことだが、彼はそのわずか2年後の1999年に世界一過酷といわれる自転車レースに復帰し、しかも世界一になるのである。さらに2000年にもふたたびツール・ド・フランスに総合優勝してしまう。

その本音が語られた潔い文章には、拍手を送ってしまう。

この自伝はほんとうに事実のすべてを書いている。ふつうは隠しておきたいようなことまでも、赤裸々に述べている点は、本当に潔くて気持ちいい。それだけに、彼の苦しみが痛いほどよくわかる。この本はツール・ド・フランスの勝者に重きを置いていると思われがちだが、どちらかというと癌に関することの方がこの本の主題である。だから本来の題名は"It's not about the bike"自転車についての話じゃない、なのである。
もし自分が癌になったり、身内や友達が癌になったりしたときは、ぜひこの本を読んでもらいたい。きっとこの本はそんな苦しみを背負った人には、無類の勇気を与えてくれるだろう。 癌になったことのある私自身も、著者の気持ちがよく理解できたため、この本のあらゆるところで涙が出そうになったし、生きるということの喜びを教えてもらった。

”断言していい。癌は僕の人生に起こった最良のことだ。”

「癌は僕の人生に起こった最良のことだ」と最後に彼は断言する。それは負け惜しみとかではなく、人間としての本当の強さや優しさを知ることができたからである。ツール・ド・フランスに勝つためには、体力と技術だけでなく、人間としてのプラスアルファの強さがいるといわれる。彼は癌によって、その強さを知り得たのである。彼自身が言っている。「本当の話、ツール・ド・フランスでの優勝と癌のどちらを選ぶか、と訊かれたら、僕は癌を選ぶ。奇妙に聞こえるかも知れないが、僕はツール・ド・フランス優勝者といわれるよりは、癌生還者の肩書きの方を選ぶ。それは癌が、人間として、男として、夫として、息子として、父親としての僕に、かけがえのないものを与えてくれたからだ」というように、彼はこの絶望的な病気のなかに本当の人間の価値を見いだしたのである。
人間の強さと弱さを一度に教えてくれる、そういう意味でこの本は読む価値のある一冊である。と言える。

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コンピュータがわからないという方に、おすすめの1冊。

「痛快!コンピュータ学」

坂村健著・集英社インターナショナル

「コンピュータをオタッキーに追求するつもりはない。でも、これからも必要なのはわかっているからコンピュータについてもう少し知りたい。でも、コンピュータの本ってみんな難しくてわからない」、という方におすすめなのがこの本です。 これは、あのTRONプロジェクトで有名な東大の坂村先生が書かれた本で、初めての人にもわかりやすいように書かれています。コンピュータがどうして生まれたのか、どうして発展してきたのか、またコンピュータの基本的な仕組み、コンピュータは誰がかかわってきたのか、などこれ1冊を読めばコンピュータについての教養がたちどころにアップします。

そして、この本の素晴らしいところは、コンピュータ学を通して経営やビジネスについてのノウハウがつかめるところです。ちょっとしたタイミングで勝者になったもの、敗者になったものそんなコンピュータ・ビジネスをめぐる戦いや戦略などを知ることができるので、勘のいい人は昨今の不況を乗り切るコツがつかめるかも知れませんよ。もちろん2進数についての解説や論理学の話など、ちょっと専門的な内容もありますが、できるだけやさしくかかれているので、少しでもコンピュータに興味のある人ならどんどん読みこなすことができます。

この本を読んでわかったことは山ほどありますが、なかでも複雑な思いになったのが「戦争がなければ、コンピュータは生まれなかったし、インターネットもできなかったと言うこと。」技術が進歩する歴史には、必ずと言っていいほど争いが絡んでいますが、コンピュータもその例外ではありません。(逆にもっとも顕著な例とも言えます)

もうひとつ、コンピュータはもちろん計算機が進化して、情報を論理学で処理しているもので、人間の感情などはデジタルでは説明できないと思っていましたが、昨今のヒトゲノム解析などでわかってきたことの中に「人間のDNAは4進法コードで書かれている」ということ。A=アデニン、G=グアニン、C=シトシン、T=チミンの4つの塩基が結びついてDNAはできているのです。もうすぐDNAについての情報がスーパーコンピュータによってすべてわかるそうですが、そうなれば将来、人間の情報コードを持ったコンピュータが生まれてくるのかも知れませんね。(まぁ、その頃は私は生きていないとは思いますが…)

この本のひとつ不満があるとすれば、表紙と内容がちょっとミスマッチなところ。誰にでもわかりやすい本ということで、装画が江口寿史、挿画がゴルゴ13のさいとうたかをにしているのでしょうが、漫画解説本みたいに見えて、本の価値観を逆にスポイルさせているような気がします。

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